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自動運転と道路交通法
日本でもルールが整備されています
法は人の行為や技術開発を制約することがありますが、一方でイノベーションの自由を支えるものでもあります。法やガイドラインが整備され、事故や事件が起きたときのリスクがある程度数値化できれば、補償金を積み立てたり投資を受けられたりできます。
G検定2020#2を受験しました。事前の試験対策ではこの分野は公式テキストを流し読みしただけで当日ネット検索して回答していました。回答するために調べてみるとここ数年世の中でいろいろ動きがあったり、日本でも法整備が進んでいていました。
日本はITが遅れているなどと言われることも多い印象ですが、ルール整備の点では結構頑張っている部分もあるなと思い少し時間をかけてまとめてみました。
自動運転の車が公道を走行可能に
2020年4月から施行された道路交通法により自動運転の自動車が公道を走れるようになりました。
自動運転で公道を走行できるようにするため、新たに「自動運行装置」を定義し、一定の条件下では運転者の運転操作を不要としました。このほか、その装置を使う運転者の義務や、車両の保有者等は自動運転中の作動状態を記録して保存する義務などが規定されました。
上記政府広報のサイトによると自動運転レベル3の自動車であれば一定の条件の下であれば、運転者がハンドルから手を離すなどしてシステムに運転を任せられるようになるとのこと。自動運転のレベルについては次のように説明されています。
このレベルの定義はSAEのJ3016が元となっているようです。平成28年12月7日の日付で出ている内閣官房IT総合戦略室の自動運転レベルの定義を巡る動きと今後の対応(案)が経緯も含めて詳しく説明しています。
道路交通法
実際の法律がどうなっているか見てみます。
第七十一条の四の二 自動運行装置を備えている自動車の運転者は、当該自動運行装置に係る使用条件(道路運送車両法第四十一条第二項に規定する条件をいう。次項第二号において同じ。)を満たさない場合においては、当該自動運行装置を使用して当該自動車を運転してはならない。
道路運送車両法第四十一条第二項で自動運行装置が規定されています。
2 前項第二十号の「自動運行装置」とは、プログラム(電子計算機(入出力装置を含む。この項を除き、以下同じ。)に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)により自動的に自動車を運行させるために必要な、自動車の運行時の状態及び周囲の状況を検知するためのセンサー並びに当該センサーから送信された情報を処理するための電子計算機及びプログラムを主たる構成要素とする装置であつて、当該装置ごとに国土交通大臣が付する条件で使用される場合において、自動車を運行する者の操縦に係る認知、予測、判断及び操作に係る能力の全部を代替する機能を有し、かつ、当該機能の作動状態の確認に必要な情報を記録するための装置を備えるものをいう。
センサーで情報を収集して、プログラムで処理して、人の代わりに操作して、ログを残すという書き方でかなり抽象化されています。さすがに具体的なことを書くと改正を繰り返さないといけなくなってしまうのでこういう書き方になるのでしょうね。
これを見ると装置だけではなくて条件と合わせてということなので、いつでもOKというわけではないです。今後の技術の進歩によって条件が外れるのは何年後になるのでしょうか。
2 自動運行装置を備えている自動車の運転者が当該自動運行装置を使用して当該自動車を運転する場合において、次の各号のいずれにも該当するときは、当該運転者については、第七十一条第五号の五の規定は、適用しない。
一 当該自動車が整備不良車両に該当しないこと。
二 当該自動運行装置に係る使用条件を満たしていること。
三 当該運転者が、前二号のいずれかに該当しなくなつた場合において、直ちに、そのことを認知するとともに、当該自動運行装置以外の当該自動車の装置を確実に操作することができる状態にあること。
(罰則 第一項については第百十九条第一項第九号の三、同条第二項)
自動運行装置が正常に機能していてかつ、いざというときにすぐに運転を代われる状態にあれば第七十一条第五号の五の規定が適用されないとあります。それではこの適用されないという規定を見てみましょう。
五の五 自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百十八条第一項第三号の二において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第一項第十六号若しくは第十七号又は第四十四条第十一号に規定する装置であるものを除く。第百十八条第一項第三号の二において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。
2019年12月1日施行の道路交通法によりスマホなどのながら運転の罰則が厳しくなっていましたが、自動運転によってハンズフリーではない状態のスマホで通話したり、スマホの画面やカーナビの画面を注視も可能という技術の進歩に合わせた改正も行われています。
法律というわけでもないですが
サポカーに対する補助金が出ています。
65歳以上の高齢運転者を対象に、
①対歩行者衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い急発進抑制装置を搭載する車(サポカー)
②後付けのペダル踏み間違い急発進抑制装置
の購入を支援します。
サポカーについてはサポカー(安全運転サポート車)のWEBサイトが詳しいです。
条件に65歳以上というのがついていますが、同サイトの次の図を見ると高齢者に対する対策が重要なのがよく分かります。
医療技術の進歩や、車両の安全性の向上、道路や歩道の整備などいろいろな要因があると思いますが、交通事故死亡事故件数という観点では全体的に減少傾向で世の中よくなっていますね。
とはいえ高齢者が死亡事故を起こしやすいという傾向はかわらずでしかも今後高齢者の割合は増加していくのはほぼ確実なので、高齢者がより安全な車を使えるようになる施策は進めてもらいたいところです。
できれば高齢になったら車を運転しないというのがよいのでしょうが、車が生活必需品というような土地ではそういうわけにもいかないでしょうし、高齢者が簡単に使える車に代わる移動手段が急速に普及するというのもすぐにはなさそうです。