勉強をしない方が得なケースもあるし

就業している人の半分は勉強していない

興味深いデータが数多く掲載されている経済産業省の未来人材ビジョンに次のスライドがありました。

企業は人に投資せず、個人も学ばない

社外学習・自己啓発を行っていない人の割合で日本が46%でAPACの中でダントツで1位です。自分が社会人をやっていて、勉強をしていない人が意外と多いなと思ってはいたのですけど、海外とこんなに差があるとは思いませんでした。

プライベートで仕事の勉強するのはブラックという意見

業務で必要なことは会社で教育するべきという考え方だと、社外学習や自己啓発を行わないという選択にも納得できます。

書いた人の立場や書き方の影響もあるかもしれませんが、エンジニアは業務時間外でも勉強するべきなのかというブログエントリーが賛否両論で強く否定する人もいて、私はプライベートで勉強するのは自分自身のためだと考えていますけど、相手に同じ事を期待しないようにしようというのは思っています。

勉強が損になるケース

いろいろな仕事や責任のある仕事を任されて活躍したいというのであれば話は別です。ここからの話はそうではなくて、ほどほどに働いてほどほどの給与がもらえれば良いという前提になります。

勤務先がある程度の規模になると下記の条件が成立してきます。

  1. その人の能力に合わせて業務をアサインする
  2. 仕事ができなくても大きなペナルティーが発生しない

このときに短期的には仕事ができない方が良くて、長期で見ても仕事ができなくても当人はそれほど困らないという状況が発生します。

能力に合わせた業務のアサイン

前提として定型業務ではなく非定型業務を想定しています。

業務をアサインするにあたってアサイン方法はいろいろあると思いますが、基本的にはその業務をこなせるまたはこなせそうな人にアサインすることになります。これは業務に合わせて人を集めるのではなく、すでにいる人で業務を行うという仕事のやり方からそうなります。

このときに優秀な人に仕事が集中しやすいという事が起こります。短期的には優秀でその業務をこなせると分かっている人をアサインする方が安心ですし楽ですからね。

もちろん都合良くできそうな業務ばかりが発生するわけではないので、挑戦的なアサインが必要になる場合もあります。向上心がある人なら成長の機会と捉えて学びながら仕事をするというやり方で進めることもできますが、問題になるのがやったことないことはできないといって拒否するタイプの人です。

こうなると仕事を任せる側は安心して任せられないどころかアフターフォローが大変になりますし、責任問題になりかねないのでほかの人をアサインしようかということになります。

仕事を断り続けると仕事ができない人ということになるので、重要な仕事をやることはなくなりますし出世も望めないでしょう。職場での居心地も悪くなるかもしれません。でも、その程度で済むともいえます。捉え方によっては楽な仕事をするだけでそれなりの報酬がもらえるということが達成されます。

能力不足でのペナルティーは大きくない

会社ごとの事情の違いはありますけど「働かないおじさん」という言葉が使われているということから、業務量が明らかに少ない人が珍しくないことがうかがえます。

ちなみに「働かないおじさん」がいる企業が49.2%という調査もあります。

会社に“働かないおじさん”がいるか

これだけ多くの「働かないおじさん」が存在する理由の一つとして、能力(ないしはやる気)不足に対するペナルティーが大きくないということが挙げられます。

解雇しようとした場合は「労働契約法16条」の「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」に抵触しないようにする必要があり、これのハードルがかなり高く設定されていて仕事ができないから解雇をしてしまうと不当解雇と判断されるリスクがあります。

給料の減額については、給与体系に依存していてインセンティブの割合が高い給与体系であれば大きな減額になりますが、年功序列型の給与体系で年齢や勤続年数の影響が大きい場合、給与の減額幅は限られます。

ろくに仕事もしないのに高い給与をもらっていると周りから思われたり重要度の低い仕事しかアサインされないというので、充実感や達成感を得ることはできないですし評判の悪さというのがついて回るのでモチベーションを得られないという面はあり人によってはダメージが大きいですが、自発的に退職を選択するというところまでにはならないのではないでしょうか。自己正当化に成功すればつらさも少なくて済みます。

勉強しない生き方は運任せすぎる

ただ、この状況が今後も続くかというと相当怪しいのではないかと思います。

終身雇用制度が崩壊したといわれ始めてだいぶ経ちますし、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への転換も始まっています。こうなると従来の総合職採用というある意味雑な区分の雇用が減って正社員でも解雇が今よりかはやりやすくなる可能性がありますし、解雇まで行かないとしても給与水準の大幅な減少が起こりやすい状況が考えられます。

働かないおじさんにとっては厳しい状況ですけど、能力のある若者にはチャンスが増えるので良い傾向といえるのではないでしょうか。

勉強しないということが、運任せの人生につながるという考えを持ちたいところです。